ーー 10月9日 ーー
かつて成人の身体障害がある方(Aさん)の支援をほんのわずかしたことがあります。Aさんは脳性まひのために身体障害があります。
Aさん「朝、母に仕事場に送ってもらう。母の職場に間に合うように送るから、私の仕事場のカギがまだ開かない時間に着く。ドアの前で立って待っているのはつらい。」
私「それなら、ドアの近くに椅子を置いてもらったらいいのではないか?」
Aさん「私は一度椅子に座ると、前に取手になるものがないと立ち上がれない。」
私「知らなかった…」
何のことはない。彼の職場が、彼の障害を理解して、椅子を置いて、時間になって鍵を開ける人が彼の手を引いて立ち上がらせくれればそれでいいのでした。このことを言える関係が彼と職場の間になかったのでしょう。当時は私も相談支援専門員をしていなかったし、彼の職場に申し入れることがありませんでした。
極めつけは、Aさんの引っ越し先を一緒に探して、彼がこだわる浴槽と彼の障害の関係を私が全然理解していなかったことでした。Aさんは一定の深さと幅がある浴槽がある物件を探しました。私も手伝ってあちこち探しました。彼は浴槽の条件が合わないとすべて断っていました。私にはこれが理解できず、「こんなに探しても見つからないから、もう折り合いをつけてほしい」と言ったのでした。
後からAさんのお母さんから聞きました。
「今、Aは一人で風呂に入ることができる。それは条件がそろった浴槽だから。その条件を整えることができず、人に介助されて入浴するようになれば、もう一生一人で入浴できなくなると理学療法士から言われている。」
私はただ「‥」でした。
そして、Aさんはとうとうその条件に合う物件を見つけたのでした。
教科書に書かれている「障害」についての知識を理解することは重要です。それ以上に重要なのは、本人・家族からしっかり話を聴いて願いを理解することです。けっこう難しく、具体的な支援をしながら何回も話し合わないと、どんなことを求めているのかがイメージできないことがあります。いくら支援する善意がたくさんあるとしても、相手がどんなことを求めているかを把握できなければ、的外れでへたをするとかえって迷惑なことになってしまいます。